
■相続人関係図
■相続財産
(1)積極財産
住宅,預貯金,過払金
(2)消極財産
借金
AさんとBさんの父(Cさん)が亡くなり,AさんとBさんとが相続することとなりました。なお,10年以上前に,両親は離婚しており,AさんとBさんの親権者は母(Dさん)になっていましたので,AさんとBさんはCさんと交流がありませんでした。
Cさんが亡くなった後,Aさんらは,相続財産を調査するために,Cさんの家に行き,郵便物などを調べたところ,消費者金融からの督促状があり,どうやらCさんが借金をしていたらしいことが分かりました。
一方で,Cさんには,Cさん名義の住宅があり,登記簿を調べると,住宅には抵当権などの担保は付いていないようです。
AさんとBさんは,相続財産のうち,借金の方が多いようであれば借金を相続したくはないので相続放棄をしたいのですが,はたして借金の方が多いのかどうか分からない状況であり,相続放棄をすべきなのかどうか判断に迷いました。
(1)財産の調査
積極財産の調査として,①他に不動産がないか調査し,住宅のみしかなかったため,その査定と売却ができそうかを提携している不動産会社に依頼しました。また,②各金融機関に対して預貯金の有無とその残額を調査しました。さらに,③預金通帳を確認すると保険料の引き落としがされていたので保険契約の有無を調査しました(結果的に保険契約はありませんでした)。
一方,消極財産の調査として,借金や滞納税金などを調査しました。消費者金融からの借金が複数あったのですが,そのうちの1件については過払いの状態になっていました。
(2)相続すべきか相続放棄すべきかの検討
以上の財産調査の結果からは,積極財産の方が多く,積極財産を現金化することで消極財産は十分に返済可能であると判断し,そのまま相続することとなりました。
(3)相続のための手続
相続することとなりましたので,そのための手続を行いました。
具体的には,①住宅については誰も居住する予定がありませんので,AさんとBさんの登記名義に変更した上で売却して現金化することにしました。不動産の売却には一般に時間がかかることが多いのですが,当事務所では日頃から不動産会社と提携しているため,すぐに売却先が見付かりました。また,②預貯金については,金融機関で解約の手続をとり,AさんとBさんの預金口座に振り込みました。さらに,③消費者金融と交渉して過払金も回収しました。
以上のような現金化を行った後,消極財産を完済しました。
AさんとBさんは,相続財産を正確に把握することができ,相続すべきか相続放棄すべきかについても的確に判断を下すことができました。相続財産の調査については特有の調査方法がありますので,特に,あまり交流がなかった方から相続する場合には,どのような調査を行えばよいのか分からないというご相談をよく受けます。
また,相続すると決めた場合にも,不動産の名義を変更したり,預貯金を解約したりすることにも手間がかかるものです。
弁護士というと遺産争いなどのように争っている事案しか取り扱っていないのではないかと思われることも多いのですが,当事務所では今回のケースのように,相続争いが生じていない事案についても,多数のご依頼を承っておりますので,どうぞお気軽にご相談ください。