
■相続人関係図
■相続財産
住宅,預貯金
Bからの相談でした。兄のAとともに弟Cの法定相続人になったのですが,Cの遺産をAが独り占めにしようとしており,遺産内容も把握できません。
(1)財産の調査
不動産登記簿を取り寄せたり,金融機関から預金口座の履歴を取り寄せいて遺産額を確定させました。なお,預金については,Aが全部引き出していました(預金引き出しにはBの承諾もいるのですが,BはAが後日分割してくれるのだろうと考えて承諾したそうです)。
(2)遺産分割案の提示
調査した遺産について,法定相続分に応じて分割する提案を行いました。
ところが,Aからは弟C名義の銀行預金の一部は実際はAの財産であり,Cの遺産ではないと主張してきました。Aによると,その銀行預金は利息が高いためA自身も口座を持っているのであるが,預金額に上限があるためA名義ではもう預けることができなくなったので,Cの名義を借りてAの金員を預けたのだという主張内容でした。
(3)交渉決裂と提訴
Aの主張を受けて,その銀行預金の金利や上限の有無などを調査したところ,確かに金利は高いのですが,上限があるという事実は確認できませんでした。そこで,その調査結果を踏まえて再度Aと交渉したのですが,従来の主張のままでした。
その後,調停を申し立てましたが,調停でもAの主張は変わらず,調停不成立に終わりました。
そこで,C名義の預金は全部Cの財産であることを前提として,その法定相続分である2分の1を渡すようにAを提訴しました(不当利得返還請求)。裁判所での審理の結果,Aの主張は認められず,Bの請求が認められました。
遺産の範囲に関する争い(遺産に含まれるのか含まれないのかの争い)もよくあるケースです。今回のような事案のほか,父親が長男名義で家を建てているが,これは実質的には父親の財産であるという争いもあります(父の財産か長男の財産かという問題と,長男の財産であるとしても長男が特別受益を受けているのではないかという問題にも派生してきます)。
誰が相続人かに関する争いや遺産の範囲に関する争いについては,調停で協議することもできますが,調停でまとまらない場合には,民事訴訟で決着をつけざるを得ません。
このように相続の問題に関しては,全部,家庭裁判所で解決できるわけではなく,場合によっては,民事訴訟も利用して解決する必要があります。